「音のレガート」by すいと まんがタイムきららフォワード 2022年9月号p339 芳文社
団地住まいでいま思えばすごく狭い環境だったんですが、ものごころついたときにはアップライトのピアノがあって、幼稚園の2年間はピアノ教室にも通って、発表会にも出て…振り返るとかなりアンバランスな感じはあります。
確か家具調のステレオもあって、レコードも何枚かあって…でも「音楽を聴く」ということがほとんど無かったんですよ。…覚えてないだけ?かもしれませんけど、でも聴くことはホントに少なかったはず。いや、記憶だけでいえばゼロです。聴いてません。
幼少の私にとっての音楽は、自分が楽器を弾いて奏でるもの、もしくは誰かが楽器を鳴らして聴こえてくるもの…でした。そしてその音は99%ピアノの音。
良かったのか悪かったのか、いまもって分かりませんが、そういうある意味「特殊な音楽環境」で育ったことは、一個人の経験として何ものにも代えられない貴重なものだったと思います。
ただ、一方で「純粋に音楽を聴いて楽しむ」という経験が最初に無かったので、どんな音楽を聴いても「演奏している奏者の/自分の姿」をどこかで重ねてしまうところがあります。ドラムのフィルインを聴くと、その叩くパターンを無意識に解析しようとするし、ギターもベースもそうです。どう演奏しているかを脳が再現しようと試みている…そんな気がします。
自分が全く触れたことのない楽器、たとえばファゴットとかのダブルリードなんかも、脳内の奏者が/自分が…そうですねいわゆる「アテ振り(口パクの楽器演奏版)」で再現を試みてしまう。
そんな私なので「楽器は全然できませんが聴くのは好きです」という人たちの「聴いている脳内」が分からなかったりします。いや、言い換えるとそういう人たちがうらやましかったりします。純粋に音楽を楽しんでいるんだろうなぁと。
こんなことをいうと、受け取る人によっては厭味ったらしいと思うかもしれませんが、IQの高い人や天才って「音楽じゃない方面でこういう感じの脳なのかな」と思ったりします。…うわースカシたことコイてんなオマエ(笑)。
ともあれ、おじいちゃんの過去が明らかになった今回の「音レガ」。あくまでマンガなので細かいところにいろいろ目が行くのは良くないのですが、ついつい目が行くのはゴカンベンを。いや「イイ方の細かさ」なんですが、オーケストラだけにトランペットをちゃんと「ロータリー」で描いているところとか好感度大です。別にアメリカ風のオケならピストンでもアリなんでしょうけど、当時(80年代?)の日本の一線のオケだとロータリーで描かれている方が読んでてしっくりきます。ましてやマーラーだしね。
そしておじいちゃんの出してきた楽譜。いいよねこういうの。「TARI TARI」の「心の旋律」を思い出しましたねぇ。あちらはちょっとこじれた話だったけど、たぶん「音レガ」ではなめらかにお話が進んでくれると思いたい…レガートだけに()
音楽マンガってどうしても主流はバンド系で、私もバンドやるのでそれはそれで好きなんですけど、吹奏楽もやってきてるのでこういう作品がもっと盛り上がってほしい気持ちは強いです。アニメだと「響け!」があるけどね。
どちらかというと「小所帯」な方がお話としてはスキかも。昔むかし「L×I×V×E」っていう吹部のドラマがあったんですが、ああいう感じのね。いえすいませんほとんど観てません(仕事がらみで…系列局がらみで…)
なんか言い訳っぽいことばかり書いてますね。さておき佳境へと進む本作、この先もとても楽しみです。作者さんには体調を整えていただきたいです。無理せずがんばって!