「まちカドまぞく」by 伊藤いづも まんがタイムきららCarat 2019年4月号 p23 芳文社
学生時代はほぼ毎日と言っていいくらい喫茶店に入って(入り浸って)いました。
大学の門の前にあった喫茶店に行けば、大抵知り合いの誰かがいたし、たとえいなくてもマスターや奥さんと話したりできた。駅前のビルにあった、夜はスナックになる喫茶店では、何度かアコースティック編成のライブも演らせてもらった。カツカレーのおいしい喫茶店、ボンゴレスパゲッティのおいしい喫茶店、ポットで出てくる紅茶専門の喫茶店…やばい思い出すと泣きそうだ。
いろいろな店があって、それぞれに良さがあって、そんな居心地の良い喫茶店で時を過ごしていると、いつしか「自分も誰かに居心地の良さを提供したい」と思うようになっていた。いろんな想像をふくらませ、いろんな店を妄想し、見取り図を描いてみたりもした。楽しかった。
そんな学生時代も終わり、(2回目の)社会人として働きだすと、不思議なくらい喫茶店に入らなくなった。学生時代を過ごした街に比べ、明らかに「文化過疎地」にある会社に勤めたので、周りで「喫茶店時間」を楽しむ人も、それに適した店も少なかった。
自分が喫茶店を楽しむ時間が減るにつれ、喫茶店をやりたい気持ちもしぼんでいってしまった。350円のコーヒーを飲む機会は無くなり、毎日インスタントばかり。こわいことに「それに不満を感じない」自分になってしまっていた。残念ながら、いまもそうだ。
今回の「まちカドまぞく」のこのコマ、この店長の言葉は、学生時代の気持ち、喫茶店について「楽しかった思い出」を呼び起こしてくれました。すぐ何かアクションを起こすわけではないけど、学生時代とはまるで違う「いま」の自分でも、何か楽しいことをやれるんじゃないか…そんな気持ちになっています。いまさらだけど、やっぱり名作ですよね、「まちカドまぞく」は。